2015年の厚生労働省の発表では、認知症患者は2025年には700万人を突破すると言われており65歳以上の5人に1人の割合になります。
認知症になることにより介護が必要になるなど周囲の援助が必要になり、正確な判断が出来なくなることで契約など重要な法律行為が出来なくなります。
家を売却するのも法律行為に当たりますので認知症になると家を売却することができなくなります。
では、両親が認知症になってしまい、家を売りたい場合はどうすれば良いのでしょうか。
例えば、よく聞く成年後見人制度を使えば、場合によっては認知症の両親の家を売却することが出来ます。
今回は認知症の両親の家を売る事についてお話ししたいと思います。
認知症の両親が持つ家を売る事は出来るのか?
認知症になると正確な判断が出来なくなるために制限行為能力者という扱いとなる為、家の売買をするといった契約など重要な法律行為が出来なくなります。
仮に、認知症の両親が一時的に正常な状態に戻ったので不動産の売買契約したとしても、後に制限行為能力者がした行為ということで取り消されてしまうことがあります。
そんなことがあるのであれば、買う側もリスクが高いのでまず契約が成立しません。
では、認知症の両親が持つ家を売ることは出来ないのでしょうか。
成年後見人制度を使えば認知症の両親が持つ家を売ることが出来る場合があります。
成年後見制度とは?
認知症が広がる中で成年後見人制度の知名度も上がってきていますので聞いたことがある方も多いでしょう。
成年後見制度とは、認知症などで正常な判断が出来ない方を法律的に支援、援助するための制度であり、法廷後見と任意後見があります。
法定後見の場合は、支援、援助が必要になった人に対して家庭裁判所に選任を申立て行い、裁判所の審判により後見人を決めます。症状の重さによって、後見、保佐、補助の3種類があります。
任意後見の場合は、将来の為に本人が予め候補者を選んでおき、本人と後見人が公正証書による契約となります。
一般的に使われている成年後見人制度は法定後見のことを指すことが多いです。
成年後見人になれる人
成年後見人は裁判所が選ばれた人のみがなることができます。実際には、候補者、申立人は親族がなることが多く、出来れば認知症になったご本人のことをよく知っている親族がなるのがやはり望ましくやはり一番は本人の子供です。
子供が成年後見人になると周囲とのもめ事も少なく、財産の管理、処分においてもスムーズにいくことが多いです。
しかし、子供が複数いて仲が悪く意見の対立がある、浪費癖があって財産を預けることができない、まったく疎遠であるといった場合は、裁判所が候補者や申立人、親族後見人を選ばないということもあります。
こういった場合は弁護士や司法書士が裁判所より成年後見人に選任されます。
成年後見人制度を使って認知症の両親の家を売れるの?
成年後見人についての権限は、契約行為などを取り消す取消権、行った行為を認める追認権、契約などの代理行為を行う代理権があり、認知症の両親の家を売る場合にこの代理権を使います。
成年後見人が代理権を使う場合は、本人の意思確認等は必要とせず成年後見人の意思で決定をすることが出来ますが、家を売るなどの財産を処分する行為については家庭裁判所の許可が必要になります。やはり、本人の大事な財産を成年後見人とはいえむやみやたらに処分することは出来ないのです。
例えば、成年後見人が本人の子供で両親を養護施設に入れるための資金として家を売りたいというような場合でも、家庭裁判所に対して両親が自宅に帰る可能性はないのか、資産を売らないと本当に養護施設に入れることは出来ないのかなどのきちんと証明しないと簡単には許可がおりません。
そのため、成年後見人制度を使って認知症の両親の家を売却することは可能ですが、そのハードルは高いと言えるでしょう。
家を売却する流れ
認知症の両親の家を売却する為には、まず裁判所より成年後見人に選任され代理権を持つ必要があります。
次に家庭裁判所に代理権を使って両親の家を売却の許可を取ります。
許可が取れれば後は通常の不動産売買と同じなので、不動産業者に仲介をお願いするか、自身で買主を探して売却することになります。
売却時に成年後見人が必要な書類としては、家の権利書、印鑑証明書、実印、家庭裁判所の許可証、運転免許証などの身分証明証となります。
親が認知症の場合は親子でもそう簡単に名義変更は出来ない
親子間で家の名義変更を行うことは可能ですが通常は贈与になります。
親から子へ贈与し贈与税を支払った上で名義変更すれば何ら問題はありません。
しかし、もし親が認知症で正常な判断が出来ない場合はたとえ親子と言っても簡単に名義変更することはできません。
認知症を患ったと判断された時点で制限行為能力者となりますので重要な法律行為が出来なくなりますので、重要な法律行為が出来なくなりますので名義変更するのであれば、家を売却する場合と同様に家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう必要があります。
参考ページ
親から贈与された家を売る
名義変更する為には、成年後見人が家の名義変更をする必要性があると判断し、家庭裁判所に申請し許可をもらう必要があります。
裁判所に許可をもらうことが出来れば親が認知症の場合でも親子間で名義変更を行うことが出来ます。
家を売るときには、親から贈与された家を売るというシチュエーションもあると思います。まずは、そもそも贈与された時点で「贈与税」がかかるという点を認識しておきましょう。また、贈与を受ける前であれば、節税する方法もいくつか存在します。そこで今回は、この「贈与」と「節税」について解説していきます。
1.親から贈与された家を売る方法
親から贈与された家を売る方法は、通常の家の売却と同じように以下の方法で行います。
・不動産の査定をする
・不動産会社を選定し媒介契約を締結する
・売却活動をする
・物件の申込・契約を受け付ける
・物件の引渡をする
結論から言うと、親から家を贈与された時点で、その財産には「贈与税」が発生します。贈与税は後述しますが、非常に税率が高い税金です。そのため、一番良い方法は、親名義で不動産を売却して現金化してから財産を贈与されるという方法です。
このときに、「住宅取得」という目的で現金資産を贈与されれば、節税効果のある「特例」が存在します。その特例を利用することによって、大きな節税効果が得られるのです。この特例についての詳細は後述します。
また、既に親から贈与された状態の場合には、税務署か税理士に相談しましょう。贈与税を計算して遅滞なく支払う義務があるからです。
2.生前贈与にかかる税金
生前贈与とは、生きている間に親族に贈与することです。
生前贈与する目的は、相続税の節税になります。つまり、生きている間に財産を贈与することによって、相続する財産を減らします。その結果、相続税を減額することができというワケです。
2-1贈与税の税率
贈与税を計算するときには、まず110万円の基礎控除をします。その後、贈与税の税率を掛けます。贈与税の税率は、贈与される課税価格(財産額)によって以下のように変わります。詳細は国税庁ホームページ※1で確認ください。
課税価格 | 200万円 以下 |
300万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1,000万円 以下 |
1,500万円 以下 |
3,000万円 以下 |
3,000万円 超 |
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
たとえば、2,000万円の財産を贈与するとします。そうなると、「(2,000万円-基礎控除110万円)×税率50%-控除額250万円」という計算になるため、695万円が贈与税額になります。贈与税の税率は上記のように非常に高い税率になります。
そのため、一般的に生前贈与する場合には、110万円の基礎控除以内の財産を、毎年贈与し続けるという方法です。
※1国税庁 相続税
http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm
2-2相続時精算課税制度
前項のように贈与税の基礎控除110万円ずつ贈与するという方法もありますが、金額が少額なため大きな節税効果は生めません。
そのため、「相続時精算課税制度」と「住宅取得等資金の非課税制度」という2つの制度を利用することも多いです。まず、相続時精算課税制度について解説します。
相続時精算課税制度とは、家の売却のために贈与された財産を相続時にまわすということです。つまり、先ほどの考えとは逆で、「大きな金額を一度に贈与したい。しかし贈与税は税率が高いので、非課税枠が大きい相続時にまわそう」という考えです。
相続税は贈与税よりも非課税枠が大きく税率も低いのですが、詳細は国税庁ホームページ※2をご覧ください。
相続時精算課税制度は非課税枠が2,500万円です。この2,500万円を超える部分に関しては、一律20%の税金がかかりますが、前項の贈与税と比べると格段に税率が低いとお分かりいただけると思います。
ただし、贈与する親の年齢条件があったり、贈与税の基礎控除110万円と併用できなかったりするので、詳しくは、こちらも国税庁ホームページ※3をご覧ください。
※2国税庁 相続税
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm
※3国税庁 相続時精算課税制度
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4103.htm
2-3住宅取得等資金の非課税制度
一方、住宅取得等資金の非課税制度とは、以下のように条件に応じて、住宅取得用の贈与が非課税になる特例です。
住宅用家屋の取得等に係る 契約の締結期間 |
良質な住宅用家屋 | 左記以外の | |
平成28年10月~平成29年9月 | 1,200万円 | 700万円 | |
平成29年10月~平成30年9月 | 1,000万円 | 500万円 | |
平成30年10月~平成31年6月 | 800万円 | 300万円 |
住宅取得等資金の非課税制度には、以下のような条件や決まりがあります。その他の条件や詳細については国税庁ホームページ※4をご覧ください。
・直系尊属である両親、祖父母などからの贈与
・住宅取得資金として贈与される前提
・単独利用も相続時精算課税制度との併用利用も可能
このように、親から取得した家を売る場合には、そもそも家を贈与されるという認識を持ちましょう。その財産には贈与税がかかってくるので、一番良い方法は冒頭で言ったように「親御さん名義で売却して現金化すること」です。そして、その現金化した財産を上記の方法で贈与することによって、大きな節税効果が得られます。
いずれの場合でも、確定申告が必要になりますので、その点は認識しておきましょう。
※4国税庁 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm
※2017年1月執筆
※所定の税率やルールなどは時期によって変わることがあります
※税金の詳細は税理士に相談ください
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